2016収穫情報 Maison Antech

2017/06/30

2016年は雨が多くて寒い春だったのに、6月末から7月の間はずっと雨が降らず8月の酷暑と乾燥で、いつもの私たちのパラメーターが狂ってしまいました。
糖度と酸、Ph度のバランスはどう取るべきだろうか?ストレートでピュアでキレが良く、かつ個性的なワインを造るため収穫をいつからスタートするべきなのか?ジレンマが付きまといました。
色々分析を繰り返し、考えぬいた結果、8月26日の夜明けとともにシャルドネから収穫をスタート。畑の向きによって暑さが変わるので、ブドウの品質を駄目にしないよう、どういった順番で収穫していくかというところが今年はとても重要でした。
チームプレーが求められる手摘み作業で丹念に収穫、様々な制約があったものの私たちの努力のおかげで酷暑の中にも関わらず素晴らしいフレッシュ感のあるブドウを摘みとることができました。
ベースワインを醸造し終えて酸の豊かさとフローラルで果実感豊かな繊細さが際立っています。この2016年に収穫されたブランケットとクレマン・ド・リムー約2年に及ぶ瓶内熟成後にリリースされます、お楽しみに!

2016収穫情報 Mas Cal Demoura

2017/06/30

Mas Cal Demoura マス カル デムラ (Terrasses du Larzac)

イザベルとヴァンサン・グマールがマス・カル・デムラのワインを手掛けてから13回目となる2016年は挑戦の連続でした。
①3か月間雨が降らなかった:暖かく湿った冬と雨がちの春の影響で開花が早進みました。しかし夏は大変なもので7月半ばから9月中旬まで殆ど雨が降らず大変乾燥したのですが、幸運なのは夜間の涼しさがバランスのワインに欠かせない酸を賦与してくれたことです。
②3か月におよんだ収穫:8月22日、白ワイン用の品種からスタート。水不足の影響でブドウの成熟が早まり通常6週間かかるところを3週間で90%のブドウを収穫、殆ど休みなく収穫を続けました。
③タンク3つ分減:乾燥でブドウは大変健全、選果に時間を取られることなく収穫できたものの、水不足と春の寒さで花ぶるいが起き収穫量はマイナス22%減、畑によっては歴史的に少ない1ヘクタール当たり10ヘクトリットルという区画もありました。
(グルナッシュは特に減少した一方で、サンソーは通常の収穫量が確保できました)

畑では新しい記録が出来ました。春は草が見る見るうちに生えてしまい、その殆どを鋤で刈り取ったり、乾燥によって不均一についたブドウの実を調整するなど2015年に比べ50%以上も畑仕事に時間を取られたほか、新たに白用の品種も植樹しました。

終わってみればこの2016年は2010年のようなポテンシャルを備えていると感じています。乾燥によって開花から収穫までの期間が短くなったうえ、ブドウ自体も凝縮度が生まれビオロジックでの栽培のおかげで2010年よりも上品で焦点の定まった味わいで、これは私たちの今までの経験の積み重ねに起因するとも言えます。

フランソワーズ・アンテッシュ来日 2016.11月

2016/12/09

リムーの女性ワインメーカー、フランソワーズ・アンテッシュが来日しました。今回は彼女がリムーで初めて造ったというドザージュなしのキュヴェ、「ブリュット・ナチュール」を携えて自信満々の様子。ピュアでストレートな味わいで素材を生かした料理に合わせやすく多くのソムリエに人気の商品のようで、フランス国内でも大変成功しているとのことです。
(来年、みなさまにもご提供できるかもしれません!)

2015年新たに購入した標高450mの12ヘクタールのオセアニック(*)にある土地は、スパークリングワインに欠かせない酸ののったブドウを収穫できる、彼女が目指す理想の味わいには欠かすことのできない場所です。 
自社畑の多い早熟なメディタレネアン(*)からは豊かな酒質のワイン、20ほどの契約栽培農家を持つ標高の高いオート・ヴァレー(*)のブドウからは爽やかな味わいのブドウが収穫されます。シャンパーニュと同じく、これらの異なるテロワールの巧妙なブレンドによりブランケットやクレマン・ド・リムーが生まれるのです。自社畑からのブドウと買いブドウの比率はほぼ半々、自社畑ならびに契約農家の畑に対しても厳しい減農薬栽培で管理しておりブドウの品質は年を追うごとに上がっています。(アンテッシュは減農薬栽培を行うワイナリーに与えられる「テラ・ヴィティス」に認証されています)                            
フランソワーズは年を追うごとに他の生産者よりも収穫を早め酸を残すこと、そしてドザージュの量を少なくしてブドウ本来の味わいを追求し、年々その評価を高めています。現在世界中の星付きレストラン、アラン・デュカスやコンラッドなどで彼女のキュヴェが使用されています。
そしてアンテッシュのワイン造りのもう一つの特徴は、長めの熟成期間です。ブランケットの法定熟成期間は最低9か月間、そしてクレマンは12ヶ月間ですが、アンテッシュは最低2年間、プレスティージュ・キュヴェに至っては6年間という長い熟成期間を設けており、これが味わいの複雑性、そして滑らかな口当たりを生み出していることは間違いありません。
*リムーは大きく分けて4つのテロワール、メディタレネアン、オート・ヴァレ、オータン、オセアニックに分けられています。

nov-2016-antech

レストラン・プティ・ブドンさんにて

Domaine Daniel Crochet訪問 2016.7月

2016/12/09

寒く不安定な天候も、7月後半に入って日差しが痛いほどの暑さに見舞われるようになってきました。
ドメーヌ・ダニエル・クロシェはサンセールのビュエ(Bué)にあるドメーヌです。クロシェが付く名前はビュエの村にもいくつかあり、世界的に有名なフランソワ・クロシェはダニエルのお父さんのいとこにあたります。
彼が1996年にドメーヌを継ぎ、最近から頭角を現してきたこのドメーヌはフランスの専門誌ルヴュ・デュ・ヴァン・ド・フランス2014年度版でロワールの表紙を飾りました。世界最優秀ソムリエ、オリヴィエ・プシエは彼のワインに大きな注目を寄せており彼のワインを好んで良く飲み、アドバイスをくれることもしばしばあるのだそうです。
親類から借りている畑も含め所有する30の区画は合計10ha、ビュエだけではなくサンセール、シャヴィニョルに広がっており、テール・ブランシュと呼ばれる粘土石灰質土壌、そしてカイヨットと呼ばれる石がゴロゴロと転がる区画から構成されています。

今年、他のワイン産地と同じく春の霜、ベト病の被害がありますが甚大な被害には至っておらず「他の地域よりは恵まれている方だわ」と妻のヴェロニク。花ぶるいや結実不良などでやはり収穫量は多くはなさそうです。雨が多かったせいで草がたくさん生えてきて、除草作業に時間を取られてしまっています。ダニエルは除草剤を使わず、樹勢を抑える目的で草を生やす草生栽培を行っていますが、土が深い場所では草と根の”競争状態”を作り出しより深くまでブドウの根を張らせるため草を残します。一方、カイヨットなど表土が薄い場所では草を抜き取ってしまいます。

ドメーヌの誇りともいえる、サンセールでも特に有名な2つの区画に案内してもらいました。

プラント・デ・プレ (Planté des Près)・・・”グリオット”と呼ばれる粘土石灰質の畑。南向きの斜面になっており表土がとても薄い場所で、ここには1958年に植えられた古木があります。石灰の割合がとても多いため、ワインはとてもミネラリーで繊細、テロワールがしっかりと反映されます。1958年に植えられたヴィエイユ・ヴィーニュを含む0.27ヘクタール。ややきつい傾斜ですが、難なくトラクターを通せるよとダニエル。粘土石灰質(テール・ブランシュ)からは骨格のしっかりした長期熟成型のワインが出来上がると一般的に言われます。OLYMPUS DIGITAL CAMERA

シェーヌ・マルシャン (Chêne Marchand)・・・サンセールを代表する畑で、ダニエルによれば25人の生産者が畑を所有しているのだそうです。写真のとおり、石がびっしりと敷き詰められた土壌。ここに3つの区画を所有していますが、キュヴェ・シェーヌ・マルシャンには樹齢が50年にもなる一番高樹齢のものを使用、また若いソーヴィニョンはキュヴェ・トラディションに、樹齢40年ほどのブドウはキュヴェ・プレスティージュに使われます。この石が転がるカイヨットの土壌からはアロマ豊かでフルーティー、比較的早くから開きやすいワインになると言われます。
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*その他の畑
醸造所のすぐ隣の畑。キュヴェ・トラディションに使われるソーヴィニョン・ブランの畑(Venoizeと呼ばれる区画)。テールブランシュの畑ですが粘土が多く土が深いため、草がのこされています。春の寒さで結実不良を起こしているブドウが多く見られます。

ビュエでもサンセールにより近い場所(Les Dis Saulesと呼ばれる区画)。ピノ・ノワールとソーヴィニョン・ブランがあります。こちらもテール・ブランシュで粘土分は高めです。均等にブドウが付いていて大変きれいです。
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ダニエルは、日が昇る方向のみ除葉し、西日が当たる方は葉を残すことでブドウが焼けてしまうのを防ぎます。また写真のように枝を長く剪定し、ブドウの実を落として間隔を広くとります。この方法は通常よりも時間のかかる作業ですが、防カビ剤や農薬を使わない栽培方法を取る限りは、空気が通り抜ける環境を造り出すことが大事なのです。

次のレポート、テイスティングへ続きます。

Domaine Daniel Crochet訪問 2016.7月②テイスティング

2016/12/09

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2014ヴィンテージと最新の2015ヴィンテージを試飲しました。

Sancerre Tradition Blanc 2015
カイヨットとテール・ブランシュの14の区画からのソーヴィニョン・ブランのブレンド。樹齢は約35年までのものを使います。
暑かった2015年はブドウが収穫前に乾燥してきてしまったほど水不足に見舞われましたが、8月の終わりに少し雨が降り、最終的には酸もしっかりあってバランスは良いとダニエル。
そんなヴィンテージにおいても、しっかりとフェノール類の成熟を待って収穫することが大切なのだそうです。
口当たりの丸み、柔らかさは2014年よりも際立っていますが中盤からミネラルのフレッシュ感があり余韻には爽やかさが持続します。

Sancerre Cuvée Prestige Blanc 2015
サンセールのグラン・クリュとも称えられるカイヨットのシェーヌ・マルシャンのブドウを含む3つの区画からのブレンド、樹齢もやや高く40年近いものです。
2015年らしい親しみやすい柔らかさを残しつつ、Tradition Blancに比べよりミネラル感が強くタイトな印象で、骨格もしっかりしています。

Sancerre Blanc Plante des Prés 2014
グリオットと呼ばれるもろい石灰質の南向きの斜面、ミネラル感がはっきりと出る土壌です。平均樹齢50年。
とても繊細な果実味、伸びやかな酸が特徴です。「2014年は水不足によるストレスがあまりなかったため、ブドウがじっくりと成熟することができた、そのため2014年は大変良いヴィンテージで長期熟成が期待できるものとなった。緊張感があり、ピュアなフルーツ感がしっかりと感じられる。ソーヴィニョン・ブランなどアロマティック品種とよばれるものは、このゆっくりとじっくりと成熟することがとても大切なんだよ」とダニエル。

Sancerre Rouge 2014
テール・ブランシュとキンメリジャンの7つの区画からのピノ・ノワール。樹齢約35年までのものを使用します。60%樽で1年間熟成。フローラルで赤い小さなフルーツの凝縮度豊かな香り。タンニン量が比較的多くややタイトな味わいですが、これから次第に調和が取れてくるでしょう。みずみずしく伸びやかなきれいな酸。

Sancerre Rouge Cuvée Prestige 2014
3つの区画に植えられているピノ・ノワールは樹齢50年以上のもの、これらはセレクション・マッサルによって増やした優良な苗木でダニエルは「タンニンの質がとても良い」と話します。
チャーミングなTradition Rougeに比べて、タンニンのきめ細やかさ、滑らかさが際立ち全体的に上品。ブルゴーニュの上質なピノ・ノワールに匹敵する、もしくはその上をゆくような見事な出来栄え。

★このピノ・ノワール・キュヴェ・プレスティージュ2014はフランスのワイン専門誌「ラ・ルヴュ・デュ・ヴァン・ド・フランス」の2016年11月号「ピノ・ノワール特集」で表紙を飾り、もっともコストパフォーマンスの高いピノ・ノワールに選出されました。専門家たちがブラインドテイスティングで試飲を行い販売価格を想定するという試みでしたが、多くのブルゴーニュの主要アペラシオンからのピノ・ノワールが「やや高く値付けされている」と言われる一方で、このサンセールのピノ・ノワールは品質の割にとても価格が手ごろだということで「新たな発見」「衝撃の一本」と異例なまでに絶賛されました。(残念ながらドメーヌの在庫がなく、手に入れることができませんでしたが次ヴィンテージ2015にご期待ください!)

320日の日照 2013ヴィンテージのラングドック

2016/09/02

320 jours de soleil dans Languedoc en 2013!

多くの生産地で一年を通して涼しく、雨がちの天候に悩まされたフランスにおいて、程度の差こそあれ質量ともに安定した場所がラングドック・ルシヨンです。ローヌ地方同様、寒く雨の多い天気が続き、2~3週間遅く6月半ばにようやく開花を迎えました。ゆっくりとブドウが熟し、9月から10月にかけて収穫時の暑さのおかげでしっかりと熟したブドウを収穫することができました。
一方、昔から栽培をしている古い生産者にとっては、温暖化によってブドウの成長サイクルが早く進んできた30年間から、昔に戻っただけだと話す人もいます。また、前半の降雨量のおかげで畑はしっかりと水を貯えることができ、近年生産者を悩ませ続けてきた深刻な水不足の影響も少なかったため、バランスの良いワインが多いというのも事実です。

2013年ラングドックのキーワード:
★日照:320日
★風:220日(主に北風)
★雨:春に雨が多く、6月から10月にかけては少雨だった
→ラングドック・ルシヨンはフランスで唯一、前年に比べ収穫量が上がった産地

320 jours de soleil 2013

良いヴィンテージと言っても、ブドウの熟度の見極めが重要なヴィンテージだったため、生産者によって意見はまちまち。生産者の力量が本当に試された年。良いワインには「風味の豊かさ、そしてピュアな果実感とみずみずしい酸」が表現されています。

今回、ラングドックの西と東、コルビエールとピック・サン・ルーの2人の生産者の2013ヴィンテージの見解を尋ねてみました。どちらもナチュラルな栽培を行いビオワインを生産する真面目な生産者。他の生産者に比べ、ワインにはヴィンテージの特徴がより感じ取れます。

● ソフィー・ギロドン “厳格な選別が成功の秘訣” (クロ・ド・ラネル / コルビエール)
“ブドウの成熟にとても時間がかかった2013年、ブドウの成熟度合いをしっかりと見極める力はもちろん必要だったけれど、畑は湿気が多く気温も上がり、ブドウにボトリティス菌が付く前に急いで収穫をしなければならなかった。たくさんブドウを選別した結果、30%の収量減となりました” 樽を一切使用せず造るソフィーのワインは驚くまでに純粋な果実味がありますが、丹念な畑仕事と特に2013年は厳格な選別が成功の要因となったようです。

● ピエール・ラヴァイユ “凝縮感ときれいな酸” (エルミタージュ・デュ・ピック・サン・ルー / ピック・サン・ルー)
“日照に恵まれた年、ピック・サン・ルーらしい昼夜の寒暖差が大きく、ワインには凝縮した美しい果実味とともにきれいな酸が備わっていて、時間と共に表現が増してゆく”                
赤ワイン同様、白ワインにも感じ取れる爽やかで表現力豊かな果実味。2013年は北ローヌ生まれの品種、シラーやヴィオニエ、ルーサンヌ、そしてマルサンヌも水不足による影響が少なく、みずみずしく豊かな味わいになりました。

*** 
2014年春、トラクターでの作業中に亡くなったサン・シニアンのドメーヌ、ボリー・ラ・ヴィタレルのジャン・フランソワが瓶詰まで手掛けたラスト・ヴィンテージも2013でした。
普段より約2週間遅れ9月16日に始まった収穫。1980年代を想起させるような気候で、フレッシュで複雑味が既に感じられ長期熟成型のワインだよとジャン・フランソワが語っていた通り、彼のワインには果実の凝縮した甘さがありながらも、みずみずしい酸が存在しています。一方、開花時の寒さが影響しグルナッシュは花ぶるいが起き、特にシスト土壌ではグルナッシュの収穫量が半分以下になってしまいました。しかしながら彼は、石灰質のテール・ブランシュや粘土珪土質の層にゴロゴロとした石の広がるレ・クレ、そして新しい白ワイン、ル・グラン・マイヨールのテロワールから生まれた2013ヴィンテージらしい”並外れたフレッシュ感と滑らかな果実感”にとても喜んでいました。

Domaine Françoise et Denis Clair訪問 2016.7月

2016/09/02

もともとはサントネで何世代にも渡りブドウを栽培してきましたが、生産量の全てをネゴシアンに売って生計を立ててきたクレール家。ジュヴレ・シャンベルタンのブリュノ・クレールとは親戚関係にあります。
今年の春、旅行先のシチリアで発作が起き突然この世を去った愛すべきドニ・クレール、1986年に彼がドメーヌ元詰をスタート。低温浸漬による醸造を行った初めてのドメーヌのうちの一つとしても知られ、かつてのような重たいタンニンで粗野な味わいとは一線を画し、丸いフルーツ感のある彼のサントネは高く評価されてきました。

息子のジャン・バティストはドニの後を継ぎサントネのみならず、1995年に母フランソワーズの側から受け継いだサントーバンの畑からクリアな白ワインを造っています。
現在ドメーヌはサントネを主体に65%のピノ・ノワールと、白はサン・トーバンを主体に35%のシャルドネを生産しており、2、3年前からはジャン・バティストが赤も白も手掛けています。
「父はわりとおおざっぱだったから、フィーリングで赤ワインを造っていたところもある、でも白ワインは大変に正確な作業が必要とされるからそんなわけにはいかないよ!」
奥様がアルザス出身ということもあり、アルザスそしてそのワインをこよなく愛する彼、そのフレッシュで純粋な果実の味わいを持つワインが大好きなのだそう。
そしてブルゴーニュの2013年のようなクリアな果実感のある爽やかな味わいを好んでいます。

「サントネは霧が発生しやすく霜をよける役割を果たすので、今年の春の霜害による被害は少ない方だよ。ただサントーバンは大きく影響があって、プルミエ・クリュのダン・ド・シアンなどでは30%ほど被害が出ているけれど、隣のアン・ルミリーでは殆ど被害がない、つまり場所によって様相が全く異なるんだ。
雨が多かったせいで、灰色カビ病の被害が出ているため銅の薬剤を主体に畑に散布している。ビオのドメーヌは病気の被害で収穫量の30-40%を失っている、僕らも出来る限りナチュラルに栽培するよう心掛けているけれど多少の農薬を使うことは必要なヴィンテージだね」

クレールのワインは、アメリカでも人気が高く、世界的に注目されている暑さがもたらしたリッチな2015年についてどう思うか、尋ねてみました。
「2015は赤の偉大な年だと思っているけれど白はややtoo muchな印象、ちょっと重過ぎるかもしれない。一方で2014の赤と白はどちらも大変バランスが良いと思う」

– Saint Aubin Blanc 2014
客先からの人気が増えたので、En Vermarain à l’Estのアリゴテを引き抜き今年シャルドネを植えました。将来的には2つの区画のブレンドになります。これまでは4樽ほどしかなかった生産量も増える予定です。サントーバンらしい澄みきったフルーツ感と伸びやかな酸。

– Saint Aubin 1er Cru Les Murgers des Dents de Chien 2014
サントーバンを一躍有名にしたクリュ、シュヴァリエ・モンラッシェから伸びる小道を上った場所にある石だらけで表土の薄いテロワール。サントーバン最高の白と称えられる通り、ミネラル豊かで逞しい白。2014年らしい滑らかな果肉感。クレールの畑は樹齢60年を超えるものもあり、一層深みがあります。
お父さんの代では赤白それぞれ一つずつの樽業者と契約していましたが、ジャン・バティストは各ワインに合わせて樽を選択しています。彼の白ワインにはフランソワ・フレールの樽が一番合うとのこと。また赤白共にメルキュレの樽も使用し、色々な樽業者を使うことで複雑味を出します。

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↑ ダン・ド・シアンの畑。文字通り鋭い「犬の歯」のような石が一面にゴロゴロと転がります。

– Saint Aubin Rouge sur le Sentier du Clou 2014
サントーバンでもピノ・ノワールとシャルドネが両方造られる場所。ジャン・バティスト曰くどちらかといえば赤向きのテロワール。2014年らしくチャーミングで、丸みのあるピュアなフルーツ感と爽やかな余韻。

– Santenay 1er Cru Clos des Mouches 2014
1.57haのみの小さなアペラシオン。石壁(クロ)に囲まれた早熟な畑、3分の1は樹齢60年を超えますが、スパイシーでよりタニックなClos de la CommeやTavannesよりも早くから花開きチャーミングな個性を持ちます。2014年はさらにその柔らかさが全面に出た味わいです。新樽比率は10%~15%程。

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↑ クロ・デ・ムーシュの畑。的確な畑仕事のおかげで、ブドウがしっかりと実をつけています。

ダン・ド・シアンの畑で(右=ジャン・バティスト・クレール)
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ラングドック・ルシヨンで2016年初の収穫スタート

2016/08/31

今年もラングドック・ルシヨンで初となるミュスカの収穫がスタートしました。一番手は昨年同様、フィトゥーのローラン・メナディエ(シャン・デ・スール)です。何よりもフレッシュ感を白ワインに求めるローランは糖度・酸度・アロマのバランスを見極め、潜在アルコール11~11.5%で収穫。暑かった2015年に比べ5日遅く8月12日にスタートしましたが、近隣の生産者は8月中旬からのスタートのようです。水不足による影響で40-45hl/haほどの収量を予想していたもの、実際は35hl/ha程になりました。「それでも潟と海に近いこの区画は(海からの湿気があり)そこまでひどい水不足には陥っていない」とローラン。状況が厳しいのはグルナッシュで、冬から春の雨が少なかったこと、さらには開花がうまくいかず、北風と突然の暑さが花ぶるいと結実不良を招いてしまったことで、収穫量は40%減少の見込みです。
シャン・デ・スールは現在ビオロジックに転換中です。

CdS muscat 2016

こちらも地中海からほど近いカネ・アン・ルシヨンのドメーヌ、マス・ボーは8月中旬にミュスカの収穫をスタート。「暑く、トラモンタンヌ(この地域特有の北西から吹き付ける風)のなか、水不足に悩まされながらの収穫ですが、シャトーヌフのようなごろごろとした石(↓写真)が湿気を保ってくれており、他の生産者に比べまだ恵まれている」とのこと。一方、グルナッシュの収穫も控えていますがこちらも昨年よりも遅く、水不足と春の花ぶるいにより収穫量はどちらのドメーヌも残念ながら40%ほど減少する見込みです。

Mas Baux muscat 2016

Domaine Taupenot-Merme訪問 2016.7月

2016/08/09

Domaine Taupenot-Merme (Morey-Saint-Denis)

ブルゴーニュを襲った歴史的な春の霜害はトプノ・メルムの区画にも影響が及んでいました。本拠地のモレ・サン・ドニは被害が少なかったものの、ジュヴレ・シャンベルタン、シャンボール・ミュジニーに所有する区画は大きな損失となっています。
「普段は村単位での被害だったり、もしくは標高の低い場所に被害が及ぶのだけれど、今年はブルゴーニュ全体が標高の高い場所も含め霜にあたってしまったという点で、被害を受けた地域の大きさには皆驚いている」とヴィルジニー・トプノ。
春から初夏にかけて雨がちの天候が続き、畑には灰色カビ病が拡大。2001年から農薬を一切使用しないビオロジック栽培を貫いてきたものの、今年はそれ以来初めて農薬の使用に踏み切らずを得ませんでした。多くの生産者がこの病気について「今までに見たこともないほどの酷さ」と語るように、ビオを実践している多くの生産者が今年、ビオを止めざるを得ない状況に陥っています。

8月に入り天候も回復し、順調にブドウが成熟しているとのことですが今年の収穫量は僅かなものになりそうです。

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特級ミュジニーの隣、シャンボール・ミュジニー・プルミエ・クリュ ラ・コンブ・ドルヴォーの畑 
– 数本の木にようやく1,2個の房が確認できるという厳しい状況(80%の損失)

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モレ・サン・ドニ・プルミエ・クリュ ラ・リオットの畑 (40%の損失)
– 1本の木にいくつか房が付いており、こちらは被害が少なめ
雨が多いため、畑を耕しても草がすぐに生えてきます。

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樽で熟成中の2015年と、瓶詰めされた2014年を試飲しました。

暑く乾燥した2015年は早熟なヴィンテージのため、9月8日から収穫をスタート。「豊かな味わいのヴィンテージ」とヴィルジニーが表現するように、どのワインもテロワールの個性を表しながら肉付きの良い果実感があります。
2014年は、暖かな春に続いた涼しい夏、9月に訪れた暑さがブドウの成熟を促し9月17日に収穫が始まりました。今では秀逸なヴィンテージとして評価される2014年、ヴィルジニーは「ジューシーでグルマンなヴィンテージ」と表現、純粋で清らかな果実感と美しい酸の伸びがありクラシックなブルゴーニュの良さが感じられます。

どのワインも素晴らしいのですが、モレ・サン・ドニ、ラ・コンブ・ドルヴォー(シャンボール1er)、レ・プリュリエ(ニュイ・サン・ジョルジュ1er)、マゾワイエール・シャンベルタンには凝縮したフルーツ感があります。彼女によれば、これらの区画のブドウは結実不良を起こしやすいため常にギュッとつまった果実の味わいが感じられるのです。
モレ・サン・ドニの官能的にすら感じる濃密で引き締まった味わいは、シャンボールやジュヴレに決して引けをとりません。ドメーヌでまず売り切れになるものは、まずモレ・サン・ドニからなのだそうです。

以前にも増して感じられる品の良さは、どこから来るのかヴィルジニーに尋ねてみました。
「ビオロジックによる栽培を続けてきたことで、ブドウの品質が向上していること、そして畑仕事もより綿密に行っているから」と彼女。
また、選果の質を高めるため収穫後の選果に微振動選果台を導入したことも更なる品質の向上に一役買っています。

メゾン・アンテッシュの2015年

2016/06/10

【ラングドック、リムーのメゾン・アンテッシュからの便り】

2013年、2014年に続き見事な収穫となったリムーのメゾン・アンテッシュの2015ヴィンテージ。誰もがフレッシュな快活さがストレートに感じられると話していますし、アロマの豊かさは特に際立って見事です。
ブドウの熟度がどんどんと上がり、急ぐように8月20日に収穫をスタートしました。メゾンにとって収穫は特別なもの。畑からセラーでの作業全てにおいて、これまで自分たちが日々積み上げてきたものに集中しなければならない、一つ一つが大切な作業です。9月15日までの27日の好天のなか、殆ど休むことなく収穫を行いました。そしてブレンドの段階でこのヴィンテージがいかに大きな可能性を秘めているのか確認することができました。

この10年間、アンテッシュではメゾンのスタイルを決定づける醸造技術の向上に目を向けてきましたが、さらなるフィネスとエレガンス追求するために畑の方にも目を向け、理想的な場所を探し続けていました。リムーとセピーとの間、標高400メートルの高地にブドウ畑を購入したのです。12ヘクタールの畑はピレネー山脈を向く粘土石灰質の南向き斜面です。高樹齢の木なので収量は少ないですが、凝縮したブドウを実らせます。まだまだここは実験の段階ですが、皆が大きな期待を寄せています。

2015年11月3日、メゾンを50年に渡り支え続けたフランソワーズ・アンテッシュの叔父ロジェ・アンテッシュがこの世を去りました。兄弟であるフランソワーズの父ジョルジュとは見事なコンビネーションで、メゾンの発展に大きな貢献をした人物です。
彼は企業家であり、自信家で頑固な人間でしたが常にオープンマインドでした。フランソワーズが社長に就任する意志を伝えた時には、すぐに彼女を支え、そしてアドバイスを与えてくれたのです。
アッサンブラージュ、展示会など、全ての大切な場面において、フランソワーズ、ジョルジュ、そしてロジェの3人が20年に渡り手を取り合って協力してきました。
彼のいない全ての作業は、何か寂しいですが悔やんではいません、彼の大きな笑顔とあたたかなアドバイスは、私たちに幸せをもたらしてくれたからです。

Antech 1606