Domaine Philippe Delesvaux

2014/08/15

2月、アンジェで開催されたルネッサンス・デ・ザペラシオン(ニコラ・ジョリー率いるビオの生産者団体)の試飲会を訪れました。フランス各地の自然派生産者が集まる中、ドメーヌ・フィリップ・ドゥレヴォーのカトリーヌとフィリップご夫妻に会うことができました!ドゥレヴォーはアンジューと見事なコトー・デュ・レイヨンの生産者として世界的に認知されている生産者です。
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その翌日、フィリップ・ドゥレヴォーのドメーヌを訪れました。
相次ぐ豪雨で水かさがいつもより増し、水面から木の枝が顔を出しています。「水が多いおかげで、いつもよりもっと美しい景色を楽しめるよ。ロワールにはフランスの水の半分が流れ込むんだ」とフィリップ。水面に朝日がきらめき、とても美しい朝の光景に目を奪われます。
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ドメーヌがあるラ・エ・ロング(La Haie Longue)の集落へ向かいます。道の脇にはむき出しになったシスト土壌が見えます。「ここのシストは、南のフォジェールなどの柔らかく木の根が割り入る柔らかなシストとは異なり、とても硬いんだ」とフィリップ。
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寒い中やっとテイスティング場所に到着。やっと温まれると思いきや、ここはワインの醸造兼ストック兼事務作業場所・・・バリックやタンクがきれいに並べられています。入り口のドアには”原子力-永遠の危険”と書かれたフランス全土の原発ロケーションを書いたおどろおどろしいポスターが貼られており、目を奪われます。「フランスにはこんなに原発があるのよ、恐ろしいことでしょ」カトリーヌがすかさず話しかけてくれます。そしてデスクに貼られているのは某ワインテイスターを風刺した漫画のコピー・・・こんなところにも、彼らのフィロソフィーが見え隠れしています。
そして、エントランス付近でテイスティング開始。なかなか体は温まらず、手足の感覚がなくなってきます。寒そうにしているとカトリーヌがフリースの上着を貸してくれます。
おいしいチーズとパン、フィリップ自慢のお手製のリエットを頂きつつ、見事な97年のセレクション・グラン・ノーブルまで味わわせていただき心も体も満たされた気分になりました。
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一見柔らかな物腰の彼らですが、大変なこだわりとプライドを持ってワインを造ります。フィリップとカトリーヌは天候のすぐれないヴィンテージにおいて、ワインの収穫をあきらめることもしばしば(かといって他に売るという判断すらしません)、2012年はカベルネ・フラン、そしてコトー・デュ・レイヨンのシュナンも収穫しませんでした。
カトリーヌが常に”自然の神様次第”と語るように、貴腐は特に生産が天候に左右されやすく糖度が低い場合は生産が難しいのです。「私たちの娘が生まれた時、貴腐のブドウを一粒とって、飲ませてあげたの。きっとおいしいと思ったに違いないわ」と嬉しそうに話します。

★11ヘクタールを所有するドゥレヴォーの区画
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● Clos du Pavillon・・・ロワール、レイヨンとルエの支流からほど近くのなだらかな丘は石炭を含んだシスト土壌。川からの水分が程よい貴腐を生み出します。特に石炭の割合が高い土壌で、ここは19世紀、アンジェで有名な石炭の生産地だったのです。この近くに点在する小さな家のいくつかはもともと炭坑労働者たちが寝起きする場所だったそう。この土壌は、ワインにミネラルと酸を与えるのですが、ここから主にコトー・デュ・レイヨンが生み出されています。彼らのレイヨンは、しっかりと糖度がありながら美しいフィニッシュを持っているのです。

● Clos de la Guiberderie・・・比較的平らな土壌で小石に似たプーダング土壌、シストの母岩の上に重なっていますがご覧のとおり、さほど厚い土壌ではありません。ここにはル・ロック(Le Roc)用の一部のカベルネ・フランが植えられています。プーダングとは円平礫岩(えんぺいれきがん)のことで、氷河によって運ばれてきて堆積した土砂が、大きさの異なる小石に変形、それら構成鉱物を結合している物質が時間と共に黄色や茶の粘土質となったもの。このプーダング土壌はワインにオイリーさ(ふくよかさ)や果実味をもたらしてくれます。
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● Feuille d’Or・・・Guiberderieの区画の並びにはアンジュー・ブランのフイユ・ドール用のシュナン・ブランがあります。ここも比較的石炭の含有率が多く、20008年のような特に寒い年、石炭に由来する酸化したような香りが出る要因になるのだそう。

● そして道を挟んだ反対側、南向きの大変日当たりのよいなだらかな斜面にMontee de L’Epineになるカベルネ・ソーヴィニョンが植えられています。その隣には2000年に植樹した、接ぎ木されていない貴重なシュナン・ブランがあり、辛口のAnjou Authentiqueが少量のみ生産されます。

サン・トーバン・ド・リュイネでフィリップがドメーヌを興したのは1983年、当時から大切にしている哲学は変わりません、それはブドウの木や土壌、生態系のバランスをリスペクトすること。そしてできる限り自然にワイン造りを進めること。2005年からはビオディナミによる栽培を開始。使用するプレパラシオン(調合剤)は仲間と手作りしています。自然豊かなこの場所は野生の動物も頻繁に見られ、「うちの畑のブドウは特に美味しいらしくて、鹿が食べにやってくるよ」とフィリップ。丹念に育てたブドウは、丁寧に選果され補糖ゼロ、天然酵母のみでSO2無添加で醸造されます。

Françoise AntechさんによるLimouxセミナー2

2014/08/05

スパークリング発祥の地Limoux
「リムーのサンティレール修道院には、昔僧侶が住んでおりフルーツやチーズ、ワインを造ったり、農耕を行っていました。ある僧侶が、酔っていたのか、どうしたのか分かりませんが、間違えてまだ発酵の終わっていないワインを瓶に詰めて(当時は水瓶が存在していた)栓をしてしまいました。
そしてその数週間後、そのワインを飲もうとしてその瓶を開けてみると泡立っているのを発見しました。1531年の記録で、ブランケット・ド・リムーの記録が残っています。
これはドン・ペリニョンがシャンパーニュを発見した150年も前のもの。リムーは最も古いスパークリングワインの生産地なんです!」

リムーのテロワール・その特異性
「リムーはまずどこにあるか、これはとても重要なポイントです。スペイン接近した場所にあるフランス最南端のスパークリングワインの産地です。畑の総面積は2000ヘクタール、41の村から成ります。
リムーに雨が降ると、その水は地中海と大西洋にほぼ同量流れていきます。地理的には300キロ離れた大西洋よりも地中海(80キロ)に近いのですが、気候は大西洋性、地中海性、ピレネー山脈からの影響も受けています。
地中海側の影響を受ける東部からはアロマ豊かでフルーティーなワインが、大西洋側の影響を受ける西部からはリッチでふくよかなワインが出来ます。そして、ピレネーに近づく南側の標高の高いオート・ヴァレ地域からはフレッシュなワインが生まれ、これら3つのテロワールから育まれたワインをブレンドすることでバランス豊かなワインが生み出されるのです」

「そしてリムーの全てのブドウ畑は南向きの水はけ良い斜面にあります。リムーは特に素晴らしい白ワインを生み出す場所で、シャルドネはとくに有名です。ラングドックの最良の白ワインを生み出す場所として認知されてきていますが、シャルドネに加え、シュナン・ブラン、モーザック、ピノ・ノワールも栽培されています

ここは人口10,000の小さな村ですが、5つのアペラシオンがあります。
– Blanquette de Limoux (Methode Traditionelle)
– Blanquette Méthode Ancestrale
– Crémant de Limoux
– Limoux Blanc
– Limoux Rouge

アンテッシュでは生産量の7割以上がBlanquette de Limouxで占められています。Methode Traditionelleというのはシャンパーニュ方式と同じ、タンクでワインを醸造したのちに酵母と糖分を加え瓶内で発酵させるやり方です。
ブランケットはモーザックが主体、クレマンはシャルドネ・シュナンそしてピノノワールが入ります。ですので、ブランケット・ロゼというものは存在しません。そしてモーザックは10%までクレマンに入れることができます。リムー全体の年間生産量1000万本のうち950万本がスパークリングワインで占められています。リムーはスティルに比べスパークリングの比率が大変高いんですよ。ただ、もちろんこの数字にはヴァン・ド・ペイの生産本数は入っていません」

ブドウ品種
●モーザック
「リムーにおいてとても特徴的な品種です。世界においてリムーとガイヤック(ほんの少量)だけでしか栽培されていない貴重な品種で、グラニースミスのような青リンゴや洋ナシのような果樹園のようなフルーツを思わせる風味があります」

●シュナン・ブラン
「ロワールの品種として知られていますが、50年前からリムーに植えられました。フレッシュな酸をワインに与えてくれます。グレープフルーツなどの柑橘類が感じられるので、本当にスパークリングに最適なのです。特にクレマンで多くの割合を占めています。2013年は特にしっかりした酸ののったシュナンが出来ました、このことからリムーはスパークリングの年ともささやかれています」

●シャルドネ
「シュナンよりずっと簡単に栽培できる品種ですが欠かすことはできません。バランス感や柔らかさをワインにもたらしてくれますからね」

●ピノ・ノワール
「10%のみクレマンに加えてよい品種です。果皮を使わないことで白ワインを造ることもできますが、リムーのピノ・ノワールの赤は有名になりつつありますし、ロゼも可能です。アンテッシュでは最上キュヴェのエリタージュに、そしてクレマン・ロゼに色付けとして使われています」

造り方
「リムーのワインは大変手間のかかる作業が必要になります。プロセッコやカヴァのように、機械で収穫することはできず、全て手摘みで行わなければいけません。それから白ワインを造り、12月にアッサンブラージュをし、1月に糖分と酵母を加え蓋をします。シャンパーニュとまさに同じく一次発酵はタンクで、二次発酵は瓶内で行われガスが発生するのです」
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●熟成
「リムーの法律では、ブランケット- 最低9か月の熟成期間、クレマン-最低12ヶ月の熟成期間が設けられていますが、アンテッシュでは最低18ヶ月熟成させており、クレマンに至っては約2年間熟成させています。こうして、私たちのスパークリングワインは、他のものに比べより柔らかく深みのある味わいになるのです」
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●デゴルジュマン
最後に瓶口にたまった酵母を取り除きますが、アンテッシュはこの時にリザーヴワインと糖分を加えます。糖分と言ってもぶどうの糖分、つまりMCRという濃縮ブドウ果汁を加えています。ビーツやサトウキビを使うよりも高くつくのですが、私たちはよりブドウに近い自然な原料を使いたいという思いからMCRを使うこだわりをもっています」

フランソワーズさんから、今回初めてリムーという地域について、そして栽培から醸造まで強いこだわりをもってワイン造りに取り組むアンテッシュのやり方をじっくりと聞いているうちに、ワインを飲んでじっくりと味わいたい気分に駆られます。
そして、Disが取り扱うキュヴェについて:

★Blanquette de Limoux Cuvée Françoise NV
モーザック90% シャルドネ5% シュナン・ブラン5%
平均樹齢20-40年のブドウを手摘みで収穫、ブドウのフレッシュさを逃さないよう直ちに優しく空気圧搾、マストをステンレスタンクで7~8度に冷やします。15日から21日間の醸造を経て造られたベースワインは12月にブレンド、ティラージュを行った後、シャンパーニュ地方の製法と全く同じ方法で最低18ヶ月間(リムーの法定熟成期間は9ヶ月)、澱引きまで瓶内二次発酵させます。
白い花や柑橘類の目の覚めるようなアロマ、熟成期間を長くとることで生まれる柔らかな口当たり、ふくよかな果実味、そして心地よい柔らかな酸がとても心地よくバランスが取れています。

★Crémant de Limoux Rosé Cuvée Alliance NV
シャルドネ66% シュナン・ブラン20% モーザック10% ピノ・ノワール4%
クレマン・ド・リムーになりますので、メイン・セパージュはシャルドネになりますが、醸造方法はブランケットと変わりません。私たちは出来る限りシンプルな方法で、ブドウそのままの味わいや特徴をワインに反映できるように醸造を行います。たった4%ピノ・ノワールが加わるだけでも、こんなに美しいサーモン・ピンクと木イチゴのニュアンスを出すのです。
チェリーやストロベリーのやや甘く落ち着いた上品な香りの中に、ほのかに感じる白い花の繊細なニュアンスがあります。きめ細かい泡が心地よく、クリーンな口当たり。フレッシュなイチゴとクリームを口に含んだような果実味とまろやかさ、伸びやかで切れの良い酸味。
アペリティフやスパイシーなお料理、またはデザートと楽しむのも良いでしょう。

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フランソワーズは、各キュヴェの品質向上に力を注ぐほか、社会的責任を負う一企業としての活動にも力を入れています。2008年にはラングドック・ルシヨンで農業に携わる企業に対する「永続的発展と向上の憲章」に調印、環境に配慮した栽培はもちろんのこと、廃棄物のリサイクル、省エネにもこれまで以上に取り組んでいます。
また、彼女はラングドックの女性醸造家のグループvinifillesのメンバーの一人、地域の経済活性化のための活動やワイン生産地としてのリムーのプロモーション活動も積極的に行っています。

今後、収量を極めて低くして、シャトー・ディケムの樽で熟成させた利益度外視の新しいキュヴェについての計画などもあると嬉しそうに語るフランソワーズ。この数週間後はパートナーとともにキリマンジャロの山へ行くと張り切っている様子でした!