故ジャン・フランソワ・イザルンが遺した2013ヴィンテージ

2015/04/08

2014年春、トラクターでの作業中に命を落とし還らぬ人となってしまったボリー・ラ・ヴィタレルのジャン・フランソワ・イザルン。残念ながら彼のラスト・ヴィンテージとなった2013年の収穫を終えて彼が遺したのはこのヴィンテージに対するとてもポジティヴな見方でした。”ワインにはいつもよりとても緊張感がある、これは僕が求め続けてきたものなんだよ!”
例年より2週間遅れて9月16日に始まった収穫。1980年を想起させるような気候で、フレッシュで複雑味が感じられ、長期熟成型のワインだよとジャン・フランソワが話していた通り、ワインには果実の凝縮した甘さがありながらも、みずみずしい酸が存在しています。一方、開花時の寒さが影響しグルナッシュには花ぶるいが起き、シスト土壌では特にグルナッシュの収穫量が半分以下になってしまいました。しかしながら彼は、石灰質のテール・ブランシュや粘土珪度質の層にゴロゴロとした石の広がるレ・クレ、そして新しい白ワイン、ル・グラン・マイヨールのテロワールから生まれた2013ヴィンテージらしい”並外れたフレッシュ感と滑らかな果実感”にとても喜んでいました。
このヴィンテージの成長を見届けることができぬうちにこの世を去ることを余儀なくされたことは、彼にとって大きな心残りであったに違いありません。最後にこれほどまでに素晴らしいヴィンテージ2013を残して旅立ったジャン・フランソワの遺志は妻カティがしっかりと受け継いでいます。今年初めに開催されたサロン・ミレジム・ビオで、カティは彼女が初めて一人で向き合った2014ヴィンテージのキュヴェ・デ・シガルとテール・ブランシュを披露しました。昨年末、ワインの仕上がりをみて安堵していたものの、彼女にとってこのワインサロンは”砲火の洗礼のようなもの!”で、少なからず緊張していました。しかしながら多くの人々がジャン・フランソワの思いが反映された、以前と同じエスプリを持つワインだと同意してくれたことでまた新たなヴィンテージに立ち向かう自信を得たのです。

カティは、ジャン・フランソワの亡きあとも多くの友人たちに支えてもらいながら、仕事量の多いビオディナミによる栽培を続けてきました。ビオディナミを始めた当初から2人はこの分野の権威ピエール・マッソンによる指導を受けてきましたが、3月に彼と話し合い改めてすべてのプレパラシオン(ビオディナミに使用する調合剤)を手作りで造ることになります。”2013年は、ジャン・フランソワがデメテールの申請を忘れてしまったからラベルにはマークがついていないけど、2015年からは再び申請をするわ”とカティ。彼が無くなった直後には、”正直なところ、ビオディナミを続けていけるのか分からない”とこぼしていたものの、ジャン・フランソワの全遺志を継ぐ決意をしました。

凝縮したフルーツの驚くほどの滑らかさとフレッシュさを持つ、ボリー・ラ・ヴィタレルの2013年は、いま十分に楽しむこともできますが、長期的に熟成をさせることで偉大なワインになる可能性を大いに秘めています。

Borie 1504
l’aube au printemps 春の夜明け – Jean-François Izarn