320日の日照 2013ヴィンテージのラングドック

2016/09/02

320 jours de soleil dans Languedoc en 2013!

多くの生産地で一年を通して涼しく、雨がちの天候に悩まされたフランスにおいて、程度の差こそあれ質量ともに安定した場所がラングドック・ルシヨンです。ローヌ地方同様、寒く雨の多い天気が続き、2~3週間遅く6月半ばにようやく開花を迎えました。ゆっくりとブドウが熟し、9月から10月にかけて収穫時の暑さのおかげでしっかりと熟したブドウを収穫することができました。
一方、昔から栽培をしている古い生産者にとっては、温暖化によってブドウの成長サイクルが早く進んできた30年間から、昔に戻っただけだと話す人もいます。また、前半の降雨量のおかげで畑はしっかりと水を貯えることができ、近年生産者を悩ませ続けてきた深刻な水不足の影響も少なかったため、バランスの良いワインが多いというのも事実です。

2013年ラングドックのキーワード:
★日照:320日
★風:220日(主に北風)
★雨:春に雨が多く、6月から10月にかけては少雨だった
→ラングドック・ルシヨンはフランスで唯一、前年に比べ収穫量が上がった産地

320 jours de soleil 2013

良いヴィンテージと言っても、ブドウの熟度の見極めが重要なヴィンテージだったため、生産者によって意見はまちまち。生産者の力量が本当に試された年。良いワインには「風味の豊かさ、そしてピュアな果実感とみずみずしい酸」が表現されています。

今回、ラングドックの西と東、コルビエールとピック・サン・ルーの2人の生産者の2013ヴィンテージの見解を尋ねてみました。どちらもナチュラルな栽培を行いビオワインを生産する真面目な生産者。他の生産者に比べ、ワインにはヴィンテージの特徴がより感じ取れます。

● ソフィー・ギロドン “厳格な選別が成功の秘訣” (クロ・ド・ラネル / コルビエール)
“ブドウの成熟にとても時間がかかった2013年、ブドウの成熟度合いをしっかりと見極める力はもちろん必要だったけれど、畑は湿気が多く気温も上がり、ブドウにボトリティス菌が付く前に急いで収穫をしなければならなかった。たくさんブドウを選別した結果、30%の収量減となりました” 樽を一切使用せず造るソフィーのワインは驚くまでに純粋な果実味がありますが、丹念な畑仕事と特に2013年は厳格な選別が成功の要因となったようです。

● ピエール・ラヴァイユ “凝縮感ときれいな酸” (エルミタージュ・デュ・ピック・サン・ルー / ピック・サン・ルー)
“日照に恵まれた年、ピック・サン・ルーらしい昼夜の寒暖差が大きく、ワインには凝縮した美しい果実味とともにきれいな酸が備わっていて、時間と共に表現が増してゆく”                
赤ワイン同様、白ワインにも感じ取れる爽やかで表現力豊かな果実味。2013年は北ローヌ生まれの品種、シラーやヴィオニエ、ルーサンヌ、そしてマルサンヌも水不足による影響が少なく、みずみずしく豊かな味わいになりました。

*** 
2014年春、トラクターでの作業中に亡くなったサン・シニアンのドメーヌ、ボリー・ラ・ヴィタレルのジャン・フランソワが瓶詰まで手掛けたラスト・ヴィンテージも2013でした。
普段より約2週間遅れ9月16日に始まった収穫。1980年代を想起させるような気候で、フレッシュで複雑味が既に感じられ長期熟成型のワインだよとジャン・フランソワが語っていた通り、彼のワインには果実の凝縮した甘さがありながらも、みずみずしい酸が存在しています。一方、開花時の寒さが影響しグルナッシュは花ぶるいが起き、特にシスト土壌ではグルナッシュの収穫量が半分以下になってしまいました。しかしながら彼は、石灰質のテール・ブランシュや粘土珪土質の層にゴロゴロとした石の広がるレ・クレ、そして新しい白ワイン、ル・グラン・マイヨールのテロワールから生まれた2013ヴィンテージらしい”並外れたフレッシュ感と滑らかな果実感”にとても喜んでいました。

Domaine Françoise et Denis Clair訪問 2016.7月

2016/09/02

もともとはサントネで何世代にも渡りブドウを栽培してきましたが、生産量の全てをネゴシアンに売って生計を立ててきたクレール家。ジュヴレ・シャンベルタンのブリュノ・クレールとは親戚関係にあります。
今年の春、旅行先のシチリアで発作が起き突然この世を去った愛すべきドニ・クレール、1986年に彼がドメーヌ元詰をスタート。低温浸漬による醸造を行った初めてのドメーヌのうちの一つとしても知られ、かつてのような重たいタンニンで粗野な味わいとは一線を画し、丸いフルーツ感のある彼のサントネは高く評価されてきました。

息子のジャン・バティストはドニの後を継ぎサントネのみならず、1995年に母フランソワーズの側から受け継いだサントーバンの畑からクリアな白ワインを造っています。
現在ドメーヌはサントネを主体に65%のピノ・ノワールと、白はサン・トーバンを主体に35%のシャルドネを生産しており、2、3年前からはジャン・バティストが赤も白も手掛けています。
「父はわりとおおざっぱだったから、フィーリングで赤ワインを造っていたところもある、でも白ワインは大変に正確な作業が必要とされるからそんなわけにはいかないよ!」
奥様がアルザス出身ということもあり、アルザスそしてそのワインをこよなく愛する彼、そのフレッシュで純粋な果実の味わいを持つワインが大好きなのだそう。
そしてブルゴーニュの2013年のようなクリアな果実感のある爽やかな味わいを好んでいます。

「サントネは霧が発生しやすく霜をよける役割を果たすので、今年の春の霜害による被害は少ない方だよ。ただサントーバンは大きく影響があって、プルミエ・クリュのダン・ド・シアンなどでは30%ほど被害が出ているけれど、隣のアン・ルミリーでは殆ど被害がない、つまり場所によって様相が全く異なるんだ。
雨が多かったせいで、灰色カビ病の被害が出ているため銅の薬剤を主体に畑に散布している。ビオのドメーヌは病気の被害で収穫量の30-40%を失っている、僕らも出来る限りナチュラルに栽培するよう心掛けているけれど多少の農薬を使うことは必要なヴィンテージだね」

クレールのワインは、アメリカでも人気が高く、世界的に注目されている暑さがもたらしたリッチな2015年についてどう思うか、尋ねてみました。
「2015は赤の偉大な年だと思っているけれど白はややtoo muchな印象、ちょっと重過ぎるかもしれない。一方で2014の赤と白はどちらも大変バランスが良いと思う」

– Saint Aubin Blanc 2014
客先からの人気が増えたので、En Vermarain à l’Estのアリゴテを引き抜き今年シャルドネを植えました。将来的には2つの区画のブレンドになります。これまでは4樽ほどしかなかった生産量も増える予定です。サントーバンらしい澄みきったフルーツ感と伸びやかな酸。

– Saint Aubin 1er Cru Les Murgers des Dents de Chien 2014
サントーバンを一躍有名にしたクリュ、シュヴァリエ・モンラッシェから伸びる小道を上った場所にある石だらけで表土の薄いテロワール。サントーバン最高の白と称えられる通り、ミネラル豊かで逞しい白。2014年らしい滑らかな果肉感。クレールの畑は樹齢60年を超えるものもあり、一層深みがあります。
お父さんの代では赤白それぞれ一つずつの樽業者と契約していましたが、ジャン・バティストは各ワインに合わせて樽を選択しています。彼の白ワインにはフランソワ・フレールの樽が一番合うとのこと。また赤白共にメルキュレの樽も使用し、色々な樽業者を使うことで複雑味を出します。

OLYMPUS DIGITAL CAMERA
↑ ダン・ド・シアンの畑。文字通り鋭い「犬の歯」のような石が一面にゴロゴロと転がります。

– Saint Aubin Rouge sur le Sentier du Clou 2014
サントーバンでもピノ・ノワールとシャルドネが両方造られる場所。ジャン・バティスト曰くどちらかといえば赤向きのテロワール。2014年らしくチャーミングで、丸みのあるピュアなフルーツ感と爽やかな余韻。

– Santenay 1er Cru Clos des Mouches 2014
1.57haのみの小さなアペラシオン。石壁(クロ)に囲まれた早熟な畑、3分の1は樹齢60年を超えますが、スパイシーでよりタニックなClos de la CommeやTavannesよりも早くから花開きチャーミングな個性を持ちます。2014年はさらにその柔らかさが全面に出た味わいです。新樽比率は10%~15%程。

OLYMPUS DIGITAL CAMERA
↑ クロ・デ・ムーシュの畑。的確な畑仕事のおかげで、ブドウがしっかりと実をつけています。

ダン・ド・シアンの畑で(右=ジャン・バティスト・クレール)
OLYMPUS DIGITAL CAMERA